2017年09月27日

Googleの誕生日を祝う

今日、2017年9月27日はGoogleの19歳の誕生日だそうです。もう19年も経ったのですね。

Googleの誕生前後は私は大学院生で、大学の計算機室に置いてあるUNIXだったかマッキントッシュだったかを使って「Googleの検索結果が凄い!」と盛り上がった記憶があります。

Google以前、1995年頃はまだ検索サービスというものは無くて、手動で集めて分類されたインデックスサービスがメインでした。海外だとYahoo!、日本だとCSJインデックスをよく使っていた記憶があります。分類されたディレクトリを一つずつ辿っていって、望ましいリンクを見つけて飛ぶ、というもので、辞書で文字を引くのに似ていました。もちろん、インデックスに載っていないサイトにはたどり着けず、有用だけれどメジャーじゃないなURLは人づてに伝達されていました。

日本のインデックスサービスの検索はディレクトリに整理された情報しか出てこなかったのに対し、Yahoo!はディレクトリに整理された情報だけでなく、沢山のインターネット上のウェブサイトを自動的に集めてきて、それを引っかけてくれた点で、画期的だったと思います。おそらくちょうどその頃、Windows95が発売され、パソコンをインターネットに繋ぐことのハードルが一気に下がった時期でしたので、ウェブサイトが飛躍的に増加した時期でもあったと思います。それより以前にはそもそもインターネット上に情報が無く、ほとんどのウェブサイトは大学のサイトだったものが、95年頃から企業がインターネットに顔を出してくるようになりました。

そんなYahoo!の検索は、今までなら絶対にたどり着けなかった情報にたどり着けるようになったという点で素晴らしかったのですが、検索結果はまだまだユーザーフレンドリーではなく、玉石混淆というか、何でもかんでも引っかかって、それが無造作に並べられていたため、目的の情報にたどり着くにはかなりのテクニックを要する状況。そして、96年、97年とインターネットの一般普及に従ってサイト数が爆発的に増加し、Yahoo!での検索が困難になっていきます。

Googleの噂がきこえてきたのはそんな頃だったと思います。スタンフォードになにか凄い検索があるらしい、という触れ込みでURLが伝わってきて、検索をしてみると、まさに「I'm feeling lucky」な検索結果が返ってきたことを憶えています。1997年だったと思っていたのですが、創立は1998年ということで、どこかで記憶が一年飛んでしまったようです。I'm feeling luckyのボタンはその当時からありました。

1998年11月のGoogleトップページを、internet archiveで見ることができます。このトップページのシンプルさも当時画期的でした。Yahoo!もCSJもイエローページも、トップはディレクトリでごちゃごちゃしていたのに対し、Googleは検索窓一つ。全てを検索窓からという思想は既にこのときにあったんですね。

Pagerankの論文も当時触れた記憶があります。最新の数学が一般社会に役立つことはあまりなく、当時は暗号理論に整数論が使われてホットだったくらいでしたが、pagerankの論文は簡単な線形代数でありつつも、目の前でその理論が新しいサービスに結びついて展開されたのは非常にインパクトがありました。

そんな頃からもう19年経ったというのは感慨深いですね。いまや世界中の情報がGoogleにあつまり、Googleを通って世界が動いています。50年前にフレドリック・ブラウンやアイザック・アシモフが預言した世界に一歩ずつ近づいていっている気がしますね。

Answer (Fredric Brown)

The Last Question (Isaac Asimov)

Analyisis of "The Last Question" by Isaac Asimov and "Answer" by Fredric Brown


ちなみに。

フレドリック・ブラウンの「Answer」、実はずっと探し続けていた本でした。おそらく小学生の頃に読んで、そのシーンがすごく印象に残っていたのですが、googleのことを考えるといつもこの話が思い浮かびます。ただ、誰の何という小説だったかさっぱり憶えていませんでした。

科学者は世界中のコンピューターを繋いで、聞いた。
「神はいるか」
「Yes, 今こそ神は存在する」


今回googleのことを書くにあたって、これまで曖昧だった記憶を辿って、そして「Google」の能力を駆使して(!)やっと探し当てました。大人になるまでずっと、このコンピューターってのは2001年宇宙の旅に出てくるHALだと思っていたのですが、大人になってから映画を見直してみてもどこにもそんなシーンが存在しない。星新一のショートショートだったかなとおもって調べても、似ているけれど違う。(「神」という作品があります。)しかし、これを世界中のテキストの中から探し出すことを可能にしたgoogleという仕組みは素晴らしいですね。今は当たり前に存在していますけれど、20年前にはまったくあり得ませんでした。その意味で、確かに「神」は私達の手の中に存在しているのかもしれません。
posted by jinya at 18:54| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月10日

googleクラウドにたてた Web Server をセキュアに使う

一つ前の記事「クラウドでのデータ分析を推奨する理由」で予告した話題です。ウェブブラウザ経由で利用する分析ツールを想定していて、それに対して簡単かつ安全にローカルからアクセスする方法です。この方法はエンジニアにとっては当たり前のことを繋げただけなのですが、データ分析者にとってはなかなか敷居が高い話題なので、ご紹介したいと思います。

やりたいこと


最近はブラウザベースの分析ツールが増えてきました。JupyterやRStudioなどがその最大手だと思いますが、これに限りません。分析者は主に、ローカルにウェブサーバーをたてて利用していると思います。

一方で、最近はクラウドでデータ分析をすることが増えてきました。上で参照した記事でも書きましたが、データセキュリティの面で安全であること、ビッグデータに対応しやすいこと、計算機リソースを調達しやすいこと、作業を一元管理できることなど、様々なメリットがあります。

この二つを併せて、クラウドでたてたウェブベースの分析環境を利用したい、しかも安全に、というのが今回のモチベーションです。

悩み


しかしそのためには悩みがありました。データや分析ツールはクラウドにあって、ローカルからはブラウザでそのリソースにアクセスしたい。このとき、データセキュリティを保つためには、@通信経路が適切に暗号化されること、A認証が適切に処理されていること。Aは特に、どこからでもID/PWだけでログインできるのはよくない、必ず二段階認証や、公開鍵認証などの方法で本人確認がなされてほしいです。

ここで、ITエンジニアであればこれらを満たす環境を容易に作ることが可能ですが、データ分析者にとってはなかなかハードルが高いです。

例えば一つの案として、クラウドに立てた分析マシンにグローバルのIPアドレスをつけてやって、そのポートに対してhttpで直接アクセスできるようにしてしまうと、通信経路が暗号化されませんから、機密のデータが全て漏れてしまいます。では、https化しようと思っても、SSLの認証が、ポートが、などなど、分析者はあまり得意ではありません。もう一つ、SSHトンネルを使ってローカルマシンのポートをクラウドに転送する方法もありますが、これも多くの分析者にとってハードル高めです。

もう一つ、これは小さな悩みとして。ローカルマシンから計算サーバーへSSHトンネルを掘ってその中を通す手段を確立するところまではできたとしましょう。SSHの通信元はローカルマシン、通信先は計算サーバーのグローバルIPです。さて、計算サーバーは計算をしている間だけ動いていればいいので、使い終わったらいちいち停止します。すると、次に立ち上げたときに、IPが替わってしまうんです。IPは共有資源ですから、使っていない間は占有しない方がいい。よって毎回返すのですけれど、そのために毎回IPが替わって、SSHトンネルを掘る宛先も毎回変えなければならない。この些細な手間が悩みです。(プロキシサーバーをたてるとか、IPでなく名前でアクセスすればとか、もちろんいろいろ方法ありますが、それはそれで事前にいろいろセッティングしなければならないので。計算サーバーというのはある種使い捨てなので、毎回小さな手間がかかるのはデータ分析に差し障りがあるのです。)

GCPでの解決方法


全体図を示します。以下でこれを解説します。ここではブラウザベースの分析ツールということで、RStudio Serverに出演していただきますが、これに限らず何でもよいです。
tunnel.png

google cloud shellはブラウザからアクセスできる小さな仮想マシンで、google側にあります。GCPのコンソールの右上にあるボタンを押せばすぐ、ブラウザでコンソールが立ち上がります。そしてこのマシンは、ローカルとはブラウザで繋がっており、リモートではGCEと繋がっています。このマシンをシエルさんと呼びましょう。また、以下ではGoogle Cloudにある計算サーバーをサブさん、ローカルで操作するマシンをロカさんと呼びます。

ロカさんとシエルさんとの通信はブラウザで行います。シエルにアクセスするにはまずGCPの管理コンソールにアクセスしますから、この時点でロカさんとシエルさんの通信はGoogle Accountで認証されています。Google Accountはほとんどの場合ID/PWと携帯電話などによる認証コード確認の二段階認証されているので、これは安全だと思いましょう。そして、ロカさんのブラウザとシエルさんとの通信はこの認証と、Gooleさんへのhttpsアクセスの中を通っていますので、安全です。つまり、シエルさんのシェル画面が、Google Accountで認証されたhttpsのトンネルの中を通って、ロカさんのブラウザに転送されています。

次に、シエルさんとサブさんとの通信を確保します。ここはSSHでトンネルを掘るのですが、シエルさんには素晴らしい機能が搭載されていて、Google Cloudとの間にアクセス承認がビルトインされています。つまり、シエルさんはGCPで作ったプロジェクトへのアクセス権が、プロジェクトのアクセス権と同等に既に与えられています。ですから、自分が参加しているプロジェクトに対してシエルさんはSSHでアクセスすることができ、逆に参加していないプロジェクトのリソースにはアクセスできないようになっています。さらに、cloud shellは初めて利用する際にシエルさんのインスタンスで鍵ペアを生成して、これを使って自分のアクセス権が設定されたプロジェクトとの認証を行いますので、その鍵を使うときにパスフレーズを入力する(これは、その鍵を開けるための鍵で、初期設定の際に決めます。確かブランクでもよかったと思いますが、何か入れましょう)だけで、あとは公開鍵認証でさくっと認証してくれます。これは便利!

さて、では、シエルさんからサブさんへSSHのトンネルを掘りましょう。GCPコンソールからgoogle cloud shellのボタンを押すと、シェル画面が立ち上がります。これはシエルさんのコンソールです。ここで、

gcloud compute ssh sabusan --project projectSabusan-123456 \\
--zone asia-northeast1-a --ssh-flag="-L" --ssh-flag="8080:localhost:8787"
を実行します。ここで、「sabusan」はサブさんのインスタンス名、「projectSabusan-123456」はサブさんが立っているプロジェクトの名前(フルネーム)、「asia-northeast1-a」はサブさんの立っているゾーン、「8080」はそのままで、「8787」はサブさんに立てたRstudio Serverへのアクセスポートです。なお、8787はRStudioのデフォルトポート、つまり、なにも指定しなければ8787番で立ち上がりますが、普通のhttpでサブさんのツールを立ち上げた場合は80番になります。ここはサブさんのなかで何を使うかによって適宜変更してください。

「gloud compute ssh」はgoogle cloud用のsshで、これを使うとGCPの中での用語を使ってsshアクセスできます。つまり、「sabusan」や「projectSabusan-123456」という名前をうまくIPに変換してくれて、その認証なども考えてくれて、正しくアクセス先に導いてくれます。上で、IPアドレスが毎回変わるのが面倒ということを書きましたが、ここではプロジェクト名とインスタンス名で通信経路を確保できるので、その悩みはなくなります。最後に、もしシエルさんのキーペアにパスフレーズを設定している場合はそれを入力すれば、無事、SSHの接続が完了します。

これで全ての通信経路が確保されました。最後に、ロカさんのブラウザ上に開かれたシェル画面の右上にある「ウェブでプレビュー」ボタンを押し、「ポート上でプレビュー8080」を選択すると、ブラウザで新しい画面が立ち上がって、サブさんでサービスしている画面、この例ではRstudio Serverの画面に繋がります。

ロカさんとgoogle cloud platformはインターネットで繋がっていて、ここが一番危険な場所ですが、そこを守っているのがSSL, Google Account認証です。そしてここはGoogle Accountでログインしていれば既に守られています。つまり、Google Accountの取り扱いさえ気をつけていれば大丈夫で、それは普段から気をつけている場所なので、問題ありません。特に、会社のメールにGSuiteを使っているところは普段からしっかり対処しています。そしてそのSSLのトンネルはシエルさんまで繋がっていて、シエルさんとサブさんは先ほどの「gcloud compute ssh 〜」でsshのトンネルを作りました。最後に、サブさんに組み込まれたRStudio Serverで作られたRStudioの画面は、SSHのトンネルとSSLのトンネルを通ってロカさんのブラウザ上に表示されます。

便利なところ


この方法の便利なところは、使うまでのアクションが三つだけだということです。(サブさんでのサーバーのインストール等の時ではなくて、すべて設定が終わって、普段分析用に利用するときです。)

@インスタンスを立ち上げる


まずは計算サーバーを立ち上げる必要があります。通常、分析するインスタンスは大きなリソースを割り当てるのが普通なので、作業が終わったら落とて、使うときに立ち上げます。これはGCPコンソールのGCEから、停止状態にあるインスタンスをクリックして「開始」すればOK。なお、RStudio Serverは自動起動するように、RStudioをインストールする際に設定しておいてください。

AGoogle Cloud ShellでSSHを指示する


上に記した、「gcloud compute ssh 〜」を実行します。このフレーズはマシン名が変わらないため毎回同じなので、cloud shellの中にメモを残しておくか、そのままスクリプトにしておいてもいいとおもいます。cloud shellはGoogle Accountが存在する限りずっとなくならないはずなので、ブラウザでGCP〜cloud shellにアクセスすればいつでもそのメモはそこにあります。

Bポート上でプレビュー


最後に、「ウェブでプレビュー」から「ポート上でプレビュー8080」を選択すれば、サブさんで立ち上がっているRStudio Serverに接続して、RStudioが使える状態になります。

安全なところ


経路は全てSSLまたはSSHで暗号化され、インターネットを通る認証はGoogle Accountによる認証だけです。Google Account認証は通常二段階認証で、普段よく使うアカウントですから、リスクが低いです。SSHもGoogle Cloudの中だけですし、認証は公開鍵認証がデフォルト、かつ、自身が割り当てられたプロジェクトにしかアクセスできないようになっています。そして特にこの方法では、プロジェクトにアクセスできるのはブラウザでGoogle Account経由、もしくはSSHでの接続だけで、httpやhttpsのポートを開けているわけではありません。プロジェクトに侵入する経路が少なければ少ないほどよく、SSHはデフォルトで開いていますが、公開鍵認証が必須なので問題ありません。サブさんのグローバルIPも立ち上げなおす度に変わるので、リスクは非常に小さいと言えます。

おわりに


以上、googleクラウドにたてたブラウザベースの分析ツールをセキュアに使う方法でした。

このように、クラウドを安全に使う方法がどんどん便利になってきていて、便利になるからこそまた安全性が増します。不便だったり、様々な知識が必要だったりすると、手抜きや知識不足のためにセキュリティが下がる可能性があるので、便利になることはいいことですし、将来的にはもっともっと便利になると思います。
posted by jinya at 11:49| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月08日

クラウドでのデータ分析を推奨する理由

私の仕事では日頃からデータ分析を仕事としているのですが、普段の行動で最も気をつけているのが、「データのセキュリティ」です。

【現状のデータ分析におけるリスク】

データ分析という仕事はお客さんのデータを預かり、これを様々な切り口で切って観察し、仮説をたてて検証する、というプロセスを何度も繰り返すのですけれど、ほとんどの場合でその預かるデータの機密性が非常に高い。それは当然で、ビジネスにおける様々な課題について、その意思決定を左右するような力をそのデータが持っているわけですから、これが軽々しく流出してよいわけがありません。

さて、そういう「虎の子」のデータを普段どうやって取り扱っているかというと、すべての局面で様々な対策をとっています。

*受け渡しから結果報告まで

まずは受け渡し。データを預からないことには始まりませんので、お客さんからデータを預かります。最近でこそ暗号化してメール添付やウェブストレージで受け渡しということが多くなってきましたが、まだまだポータブルハードディスクで現物渡し(もちろん、内部のデータは暗号化済み)とか、USBメモリに入れて郵送(これも暗号化、送付はトラッキング可能な方法で)というケースがあります。

そして実際の加工や分析の場面。預かったデータを取り扱うマシンはディスク暗号化、ログインのポリシーも強め(これを書くとセキュリティが下がるので書けません)、どのマシンに入っているかとか、誰が取り扱えるかなど、ちゃんと管理します。基本的には担当者のみがそのデータを扱うことができて、同じ社内でも担当の違うデータは扱えません。PCやポータブルハードディスクは施錠管理ですし、すべて暗号化してあるので、万が一盗難があった場合でも大丈夫にしてあります。

分析の結果をお客さんと共有する際も、昔は分析報告書を紙に印刷して現物納品というのが多かったのですが、最近はほとんどが電子ファイルでの納品で、ワードやエクセル、パワーポイントなどのドキュメントの他、分析コードや簡易ツールのコードなども電子媒体で納めることが多く、これらも暗号化してメール添付や暗号化して現物送付など、受け渡し方法に応じて対策をとっています。

*本当のリスクはどこにあるのか

さて、このように、どうしてもデータやそれに関する資料が動くものですから、それが行き来する度にリスクは発生します。「絶対安全」であることを目標としてもちろん対策をとっているのですけれど、理論的にはリスクに「絶対」はあり得ませんので、必ずリスクが存在します。

そして実は、このデータのリスクというのは私達のように外部でデータ分析の仕事を実施している会社にとどまりません。むしろ、私達はそれが本業ですから様々な対策をとっていますけれども、本当のリスクはお客さんの側にあると感じています。たとえば、データが暗号化されていない状態でPCに入っていないでしょうか。もしくは、会社内の計算サーバーがハダカの状態で足下に転がっていたりしないでしょうか。近年はSIにおけるデータのセキュリティというのは非常にうるさく言われていて、情報漏洩の事故が起きる度にセキュリティ投資が行われ、どんどん堅牢に(その一方で使いにくく)なっていますが、データ分析はアドホックに実施されることが多いので、堅牢なシステムからデータを一時的に吸い出して、手元のPCで操作するというケースが非常に多いです。堅牢すぎるシステムの中では、それが堅牢すぎるために、分析ができる環境を作る余地がありません。その結果、リスクが手元に集中します。

【クラウドの方が安全】

さて、そういう環境の中で最近にわかにクローズアップされてきたのが、クラウドです。Amazon Web Service、Google Cloud Platform、Microsoft Azureなど。2003年頃からビッグデータの時代に入り、今ではビッグデータの取り扱いはクラウドの力無しでは非常に難しい。しかし、プライベートクラウドならばまだしも、これらのオープンなクラウドでデータを取り扱うのは危険なんじゃないか。自社のデータが、その他大勢のデータと混在して置かれているのはリスクが高いんじゃないか。

数年前まではそういう話もよく聞きましたし、実際にクラウド事業者のセキュリティに関する関心度やレベル感もまちまちでしたので、そう言われても仕方がない面はありましたが、ビッグデータの波が一段落して、つまり、「ビッグデータ」がバズワードから本当に意味のあるものが選別されてきた頃から徐々に、ビジネスで使えるクラウドとは何かという部分でコンセンサスが取れてきて、各社、セキュリティの担保に非常に力を入れてきています。ですから、五年前まではまだ言えませんでしたが、今は確実に、「データはクラウドにある方が安全」です。受け渡しのリスク、盗難のリスク、暗号化してないリスクなど様々なリスクが、クラウドを利用することで解消されます。

*クラウドデータ分析のワークフロー

ここではGoogleのクラウドサービスであるGoogle Cloud Platformを例に挙げますが、他のクラウドでも、使いやすさや構築のしやすさが少し異なるだけで大体同じように使えます。

Google Cloud Platform、以下GCPと略しますが、ここではまず「プロジェクト」という単位で全てのデータが管理されます。この概念がデータ分析では好都合で、あるデータ分析プロジェクトが始まったら「プロジェクト」を作り、その中で全ての作業を行います。セキュリティもプロジェクト単位で設定できるので、誰がこのプロジェクトに参加するのか、それぞれどのデータをどのように扱えるのかなどを決めることができます。

次に、データ元はデータをそのプロジェクトにアップロードします。GCPでは様々なデータベースが備え付けられていますが、特別な操作をしない限りそれらのデータはプロジェクト以外からは参照できず、プロジェクトの参加者、さらに、参加者のうちでもデータを閲覧する権限を付与されたアカウントのみが、そのデータを見ることができます。

データを加工するのは、そのプロジェクトの中で利用される様々なサービスです。最近ではgoogleが用意している人工知能APIなどが強力で、テキスト解析や画像解析の前処理などは学習済み人工知能を用いて前処理ができます。また、bigqueryやdataprepなど、データをアドホックに操作加工できるツールもあり、さらには備え付けられていない処理はCompute Engineというサービスで計算サーバーを立ち上げ、それがプロジェクト内でデータを受け取り、加工し、またプロジェクト内のデータベースに返すことで処理することができます。

そのようにして加工されたデータを実際に分析するのも、Compute Engineで立ち上げた計算サーバーを利用したり、最近では機械学習のAPIを利用したりします。機械学習をAPI化したサービスはいま大流行していますから、google, amazon, microsoftの大手三社もこれからリリース合戦になりそうです。人工知能の花形である深層学習、googleではTensorflowもAPIで利用できますし、予測系でよく利用されているXGBoostなどもそのうちAPI化されるでしょう。APIになっているものはそれを利用し、そうでないものだけ計算サーバーをたててプログラミングする、そういう時代になってきました。

*クラウドが安全な一番の理由

そして、ここに述べた一連の作業において一番のポイントは、全ての作業が「プロジェクト」の中で完結するということです。データをローカルにコピーしないポリシーにすれば、全てのデータはクラウドのプロジェクト内に収まっており、そこから外に出ることはありません。ローカルにコピーする必要がなくなることは、データセキュリティ的にもリスクが小さくなり、機密情報の漏洩に怯える必要がなくなるため、精神衛生上も非常に良い効果をもたらします。ログインに二段階認証を義務づければ、第三者がアカウントを乗っ取って入ってくるリスクも非常に小さくなります。そして最後に、プロジェクトを削除することで、すべてのデータが無事に消えます。私達の側では、どのマシンでどのデータを扱っているかというトラッキングをする必要がなくなり、データを観察することに集中できますし、お客さん側ではプロジェクトが消えたことをもって全てのデータが安全に消去されたことを確認できるわけですから、安心です。

*特に、GCPの特徴

また、これはGCPの特徴なのですが、アカウント管理が非常に分析者向けにうまくできています。GCPにおけるプロジェクトへの参加は基本的に自身のGoogle Accountを用います。Google Accountというのはメールやカレンダー、ウェブストレージなどを束ねたそれらのすべてを使うためのもので、エンタープライズ向けにはGSuite(旧google for work)というサービス名で提供されています。エンタープライズ向けなので企業向けにしっかり管理されていて、これを導入している企業では毎日のようにメールやカレンダーツールとして利用しています。その毎日利用しているアカウントを用いて、GCPにログインすることができるのが、セキュリティを大きく向上させます。

その理由。エンタープライズ向けメールというビジネスの基幹とも言うべきツールですから、皆さんかなりセキュリティに気をつけています。多くの会社は二段階認証を用いていると思います。Google側も不審なログインには目を光らせています。そして、毎日使うものですから、アカウントに異常があったときに気付きやすい。気がつくのが早ければ早いほど、なにかあっても被害は小さくできます。

プロジェクト毎にアカウントを作ったりすると、どのプロジェクトでどのアカウント、どのパスワードだったかを管理しなければならず、そこにリスクが生じますが、毎日基幹で使うものは皆さん堅牢に使っても慣れますよね。

プロジェクトへの利用権の追加は基本的にはこのGoogle Accountを抜き差しするだけです。最近のデータ分析者はもちろんある程度こういう情報インフラの扱いに慣れているのですが、セキュリティ管理をするのが仕事ではなく、仕事はあくまでもデータの分析ですから、「google accountを入れるだけ」という簡単さでセキュリティが保たれることが非常に大事です。これが難しいと、専門のシステム担当者をつけなければならず、コストが高く付いてしまいますが、そういう面倒だけど大切な部分をGCPが肩代わりしてくれるのは、データ分析者にとっては非常にありがたいことです。

このように、データ分析プロジェクトとクラウドは非常に相性がいいんです。実は、これによって私はAWSでデータ分析を行うことのストレスから解放されました。AWSでは基本的にはことあるごとにIAMを作りますが、これはシステム開発的視点なんだと思います。作ったシステムが長期にわたって使われて、開発者はある段階でそこから抜けるので、特定のアカウントだけ消したい。でも、データ分析プロジェクトでは逆で、分析者は居続けるのだけれど、プロジェクトの方が完結すると消えてくれます。だから、GCPはデータ分析と非常に相性がいい。おそらくそのうち、私の会社のようなデータ分析をする企業は、ほとんどがGSuiteを利用して、GCPでデータ分析をするようになるのではないかなと思えるくらいです。

【分析クラウドの弱点】

しかし、このように万能に見えるクラウドデータ分析ですが、弱点もあります。

*グラフィカルツールの導入が遅れている

データ分析は、データを様々な形で観察し、そこからヒント(=仮説)を得て、検証するというプロセスを何度も何度も繰り返しますが、そこで非常に大切なのはビジュアリゼーション、可視化です。手元にデータがある場合には、ExcelやRstudio、Jupyterや、SPSS、Amosなど、視覚に訴えるツールが沢山ありました。これが、クラウドに移行したらコンソール作業しかできない、なんて状況になってしまったら、浮かぶアイデアも浮かばなくなってしまいます。データ分析に可視化の便利さは必要不可欠です。データをぱっと入れたらぱっと出てきてほしい。そこに、いちいち画像をダウンロードしたり、データをダウンロードして手元で可視化したりなどしていたら、クラウドで作業している意味がなくなってしまいます。

もっとも、これまでもグラフィカルツールが全く利用できないわけではありませんでした。昔はX-Serverなどがありましたが、最近ではウェブベースで画面が提供されます。Jupyterはそうですし、RstudioもRStudio Serverはウェブベースでの分析環境を提供してくれます。しかし、それをクラウドに仕込んで、遠隔からアクセスするにはhttpやhttpsのポートをあけるか、sshでトンネルするか・・・そういう作業は多くの分析者は苦手とするところなので、簡単に、セキュアに、ウェブの画面をこちらに飛ばしてくれるような環境が望まれます。

実はその動きは既に始まっており、GCPでは、Jypyterはcloud datalabというサービス名で最近提供され、簡単にウェブベースのクラウド分析プラットホームとして利用できるようになりました。一回だけコマンドラインで命令を入れる必要があるのですが、あとはブラウザに出てきたボタンを押してJupyterを利用することができます。

RStudioも、ローカルのRStudioを利用して、クラウドのRStudio Serverの仮想マシンを立ち上げ、アクセスすることを簡単にする試みが始まっています。(GoogleComputingEngineRからRのDockerで立ち上げる試み)このケースではまだ簡単にウェブアクセスができる部分が抜けているのですが、これも時間の問題でしょう。もちろん、ネットワークやクラウドを理解している人はセキュアなトンネルを掘ってその中を通してセキュアにアクセスすることは可能です。(私も次の記事でその方法について書く予定です。)

*プロジェクト管理ツールがない

大手三社のサービスをデータ分析プロジェクトの視点で眺めていると、プロジェクト管理ツールがないことに気付きます。ドキュメント管理やタスク管理、チャット、スケジューラーなどは、そのプロジェクトのために使えるツールが付いていると嬉しい。なぜなら、データ分析プロジェクトにおいてはドキュメント自体が機密情報満載ですし、タスクも詳細に記すと機密情報に触れざるをえなくなります。多くのプロジェクトでは外部のプロジェクト管理サービスを利用したり(その場合、機密情報は別で管理しなければならなかったり、セキュアであっても情報がプロジェクトの外に出てしまう)、Google Docsなど、同じアカウントで管理されているけれども、プロジェクトの外にあるリソースを利用しなければならなくなってしまう。これでは、「プロジェクト内で完結」の理想から外れてしまいます。

ですから、これらのツールがプロジェクトに紐付いて提供されることは、データ分析プロジェクトのセキュリティをさらに向上させ、分析者を分析以外のことで悩ませる時間が減ります。

なお、仮想マシンを立ち上げて、そこにプロジェクト管理ツールをインストールして利用するという手はもちろんあります。しかしその場合、管理ツールを管理するエンジニアを別にアサインする必要が出てきて、コスト高になります。繰り返しますが、データ分析者はそういったツールのセッティングやセキュリティに精通しているわけではないので、SaaSで提供されればそれに越したことはなく、それがプロジェクトに紐付いていてくれれば、「プロジェクト内で完結」します。

*遅いか、高いか

これはデータ分析のワークフローの特徴なのですが、データ分析にはデータをあれこれ眺めながらう〜んう〜んと考えている時間と、考えがある程度まとまって、分析の方針が決まって、えいやっと巨大なデータを加工したり、大量のCPUやメモリを使って大規模な計算を実施する時間があります。それが間欠的にやってきます。すると、考えている時間は計算リソースをほとんど使わず、計算している時間は大量に計算リソースを使うので、大きい方にあわせて計算機を動かしておくと、使っていないのにどんどん費用が嵩んでいきます。かといって、使っていない時間が勿体ないからと小さいリソースしか割り当てないと、いざ計算したいときには全然計算が終わらない、などというクラウドらしからぬ時間が勿体ない状況になってしまいます。

ですから、データ分析は仮想マシンを立ち上げて実施するのではなく、本当はSaaSで実施できるのが嬉しい。例えばR ServerのAPIが提供されていて、それにデータとリソース規模を入れてあげれば、裏で巨大なリソースが動いて、数時間後に答えが返ってくる、など。RStudio Serverの裏で自由にRのAPIが利用できるような環境になったらいいですね。TensorflowはAPI化されましたから、要望が多ければその可能性もあるでしょうし、そういう汎用分析APIがもっと多種多様にできてくると、クラウドデータ分析の利用価値がもっと高まります。


【最後に】

現状ではもちろん、お客さんの了解がなければデータをクラウドで分析することは許されませんので、ローカル環境を使うことがまだまだ多いです。しかし早晩、クラウドに置き換わっていくでしょう。クラウドのセキュリティがちゃんと認識され、ローカルに受け渡ししたりすることのリスクと同じ天秤に掛けられるようになってくれば、自然とデータはクラウドで取り扱われるようになっていきますし、ローカルで取り扱うリスクやコストが何倍にもなることが意識されていきます。その環境をgoogleが作るのか、AWSか、Azureか、はたまたアリババクラウドのような新興勢力が市場を根こそぎ持っていってしまうのか、ここから5年くらいが最も激動の時期になるんじゃないかなと、思っています。
posted by jinya at 21:45| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月03日

WordでLatex

LaTeXで数学、物理の論文を書いたことのある人はどのくらいいらっしゃるのでしょうか。MS Wordでは長らく数式を美しく、読みやすく入力することができなかったので、数学物理など、数式を主に取り扱う論文では圧倒的にLaTeXを使う方が多かったと思いますが、最近、Office 2007頃からだったと思いますが、数式エディタが刷新されてからは、Wordでもそこそこ美しく数式を入力することができるようになったので、もはやLaTeXに頼ることがなくなりました。

過去記事:
Word2007の数式エディタが実はすばらしいこと
マシになった(はず)のMS数式エディタをTeXと比較

さて、そういうところに最近のニュースで、「LaTeXを使った数式の入力がWordやPowerPointで可能に。マイクロソフトが明らかに」というのを見かけました。これは今までの数式エディタと何が違うのでしょう?

MS Wordの数式エディタの入力は、LaTeXっぽい入力ができるのですが、まだまだ開きがありました。例えば、文字自体を操作するのは(例えばギリシャ文字や記号など、また、上付き、下付文字等)ほぼLaTeXと同様の記入感でいけるのですけれど(これをUnicodeMathと言うそうです、参考:「Linear format equations using UnicodeMath and LaTeX in Word」)、分数や記号の入れ子など数式が多段になっているところは、記号を入力すると出てくる箱にうまく文字を入れてやらなければなりません。例えば、分数を入力するには「a/b」と入力すると自動的に

\begin{eqnarray}
\frac{a}{b}
\end{eqnarray}

と書いてくれるのですけれど、あくまでも「自動的」なので、本当は縦でなくて横のまま

\begin{eqnarray}
a/b
\end{eqnarray}

と書きたかった場合でも勝手に縦になってしまって、わざわざ横用の分数をマウス操作で選択してあげなければならない。つまり、やりたいことの7割くらいは簡単にできるようになったのだけれど、もうちょっと融通きいてほしいなぁと思うところはまだ残ってました。それでも、昔の数式エディタと比較すれば入力のしやすさも数式の美しさも格段に良くなったのですが。

ということで、今までの数式エディタはあくまでも数式用文字の入力が簡単になっただけでした。それが今回の記事によれば、LaTeX側にもっと振れて、数式の構造自体をちゃんとLaTeX式に入力ができるようになる。例えば上の分数は、「a/b」と打って自動的に縦にしてもらうのではなくて、ちゃんと「\frac{a}{b}」と入力することになります。(なお、横向きにa/bと書くときには普通にa/bと書けば良いです。)

ちなみに同記事によれば、日本語版への適用はまだまだ先とのこと。待ち望まれます。
posted by jinya at 17:05| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月28日

共起関係を用いたアイドルネットワークの分析

ゴーガ解析のメンバーの石田さんが、共起関係を用いたアイドルネットワークの分析をしています。

アイドルに関するデータ収集〜分析:1.1TwitterデータからDD度の可視化

彼はこの春からアイドルオタクになったそうで、業界的にめちゃめちゃ忙しい年度末をアイドルパワーで乗り切ってくださいました。仕事がしんどいときでも笑顔でアイドルのことを語ってくれるので、アイドルに救われるっていうのはこういうことを指すのだなぁと思いました。

さて、彼の分析結果、まだ途中だと思いますけれど、これを見てコメントです。

各アカウントのフォロワー直近500人をとってきているとのことですが、これは少なくとも時期をランダムにするか、もっと量を増やすべきだと思いました。twitterのデータは、ボットやスパムアカウントの影響をどうやって排除するかというところがいつも難しくて、直近500だとその影響が大きく出てしまうのではないかという懸念があります。収集数を増やせばその影響は減りますし、時期をランダムにしても同様の効果が出ると思います。一方で、twitter apiの制約もあると思いますから、そのあたりで妥協しなければならないところもあると思うのですが。

AKB系とハロプロ系で様相が全く異なるのは、記事にもあるとおりタレントさんご本人のアカウントの影響が大きい気がします。グループのファンなのか、タレントさん個人のファンなのかというところで、ファン心理が違うのかもしれません。また、分析者本人がハロプロファンなので、AKB系のファンの動向がよくわかっていないのも、これから補強すべき所なのだろうと思います。

データ分析をするときは、その業界なりその市場に対する深い理解と愛情が必要になります。それなしには市場のメカニズムを想像することなどできません。この現象は、こうなんじゃないか、ああなんじゃないか、と、様々な想像を巡らせて、仮説を作り、検証する、の繰り返しです。一方で、あまりに深入りしすぎて森が見えなくなってしまってもダメなのが難しいところ。主観が入りすぎると、仮説が恣意的になりすぎます。そのシステムに愛情を持ちつつ、一歩引いて客観的に仮説を想像するのが、データサイエンティストのポジションです。

最後に、共起関係のネットワークを見るポイント。

共起ネットワークは、実は繋がっているところを見ていてもあまり面白くないんですね。これは、繋がっていないところを見るべきなんです。なぜここは繋がっていないのかを考えると、いろんな仮説が出てきます。例えば記事中の図を見ると(これはまだ途中の画像なのでこの先変わるかもしれませんが、ひとまず今の段階で見ると)、NMBとHKTのつながりが非常に薄い。これはなぜか。また、ネットワークの外側にあるのはJKT, BNKに加えて、momowgp、つまりももクロが外側にいて、他とのつながりが薄い。JKTとBNKは両方とも海外にあるので、共通のユーザーがいないことの意味がなんとなくわかりますが、momowgpは国内で、かつフォロワー数もそこそこ多いにもかかわらず、孤立しているのはなぜか。このあたりに仮説の種がありそうです。
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2017年04月10日

ノッティンガム大学

懐かしくなって、ノッティンガム大学の地図を見ていたメモです。

通っていた校舎。さすがに約20年ほど経っているので、壁が新しくなっていますが、当時の面影が残っていました。

と思ったら、別の写真では新しい建物が!撮った時期が違うんですね。

お世話になった学生会館みたいなところ。こちら側が当時の面影のある建物なのですが、これも、取り壊されて更地になっているstreet viewが近くにありました。ここでインターネットの契約をしたり、100ポンド紙幣を出して売店のおばちゃんに目を丸くされたり(当時、100ポンド紙幣は通常流通しておらず、偽札じゃ無いかと思われて念入りに調べられました)。

通学路。冬は何にもない道なんですが、春にはこれらに全部花が咲きます。4月後半〜5月が最高に美しい道です。

住んでいた留学生会館。こんなゲートは無かった気がしますが、建物はたぶん変わっていません。留学生の他、海外から短期間招聘された先生などもここに住んでいました。

住んでいるところから一番近いスーパーマーケット、Sainsbury's。ここには米と醤油があったので、キッチンで炊き込みご飯っぽいものを作っていました。椎茸の代わりにマッシュルームを入れて、鶏肉と野菜で。パンは麦の粒がごろごろ入っているもの。

ノッティンガム駅。あちらでは長距離バスがかなり発達しているので、移動は基本的にバスでした。ノッティンガム駅は一度しか使ったことがありません。今はsuicaのようなものがあるらしいですが、当時は改札というものがなく、切符は自己申告で、停車駅ではアナウンスも無いので、常に注意していないと乗り過ごしてしまう。しかも、英国では乗り過ごしたら罰金、不正乗車の罪になりましたので、めちゃめちゃ緊張しました。

ノッティンガム城。唯一(?)の観光名所。ロビンフッドの像があります。でも、たまにしか来たことがありません。ほとんどは宿舎と大学を行ったりきたりでした。
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クラークスのビジネスシューズ

先日、十何年ぶりかに渋谷のクラークスに行ったところ、ビジネスシューズの取り扱いがあって、大喜びした話です。

クラークス(Clarks, http://www.clarks.com/ )はイギリスの靴メーカーで、創業1825年とのことですから、およそ200年ほども続いている老舗です。私がまだ学生時代、イギリスの中部にあるノッティンガムというところに留学していたとき、靴を買いたいんだけれどと相談したところ、中心街にあるこのお店を、この街で靴を買うならここしか無い!っていうくらい猛烈に勧められて、黒いビジネスシューズを購入しました。このお店です。(→street view )まだ残っていました、さすがイングランドです。

さて、その後日本に戻ってきて就職し、数年はこのときに買った靴を愛用していたのですが、あるときついに破れてしまいまして、同じ靴はないかと思い日本の取扱店を探したのですが、まったく見つかりません。15年ほど前でしょうか。当時、日本のクラークスでは、コンフォートシューズの取り扱いしかなく、クラークスというブランドは普通の靴メーカーではなくて、コンフォートシューズメーカーという位置づけでブランディングされていたんです。ですから、本国では普通の靴メーカーで、ビジネスシューズもお店にたくさん並んでいたのに、日本では結局それらを買うことはできませんでした。当時はまだネット通販など始まったばかりで、amazon.comも本しか売っていなかった時代ですから、日本にいてイングランドの靴を買うことは困難でした。

その後、私の靴探しの放浪が始まります。合う靴が全く見つかりません。おそらく足の形が悪いのと、無理に合わない靴を履いたせいで足の指の関節を痛めてしまい、今でも合わない靴を履くとすぐに痛くて歩けなくなってしまいます。ですので、結婚式などどうしても履かなければならないときには我慢して履きますが、基本的には黒いスニーカーなどをで代用していました。そうすると、スーツなどもだんだん着にくくなって、ジャケットにチノパンという格好が多くなりました。思い出すたびに買ってはみるのですが、数回履いては捨てることも何度も。5万円ほどするのも試しましたし、いろんな形を履いてみて、たまに変な形のでしばらく我慢して履いてフィットさせられても、変な形なのですぐ廃番になってしまってまた放浪です。

ということで、ビジネスシューズにはずっと悩んできたのですが、先日上のクラークスの国内店舗(渋谷店)を何気なくのぞいてみたところ、なんとビジネスシューズが並んでいるではないですか。驚いて店員さんに尋ねてみると、数年前から取り扱いしているのだとか。早速一足はいてみたところ、柔らかいし、フィットするし、即決で購入、ついでに近所のお店で最近来ていないスーツも購入して帰りました。いまのところ快適に履いています。やっと自分が履ける革靴のお店が見つかりましたから、これからは、いままで茶色の革靴が無かったため(黒さえ見つからない状態なので)に着られなかった淡色のスーツやパンツも合わせられそうです。
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2017年02月22日

巨大なcsvファイルのヘッダだけ取り替えたい

巨大なcsvファイルのヘッダだけを取り替えたいということがしばしばあります。例えば、あるソフトウェアにデータを読み込ませたいのだけれど使用できない文字が入っているとか、ヘッダにだけ2バイト文字が入っていて、それらを英数になおしたいとか、ヘッダをつけ間違えたとか。でも、大きすぎてエディタで開いて修正することはできないし。

修正したいヘッダ付きのcsvファイルをA.csvとし、修正済みのヘッダだけを一行書いたファイルをH.csvとします。A.csvのヘッダをH.csvで取り替えて、B.csvに出力します。

コマンドラインから、

cat H.csv <(cat A.csv | tail -n +2) > B.csv

でOK。一つ前の記事でも使ったプロセス置換です。

この方法が本領発揮するのは、巨大なデータファイルがgzipされているとき。そもそも大きいファイルは圧縮されていることが多く、これらを展開するとやたらディスクを食うので、できれば圧縮したまま取り扱いたい。その場合には

cat H.csv <(zcat A.csv.gz | tail -n +2) | gzip > B.csv.gz

こうすれば、展開ファイルを作ることなくヘッダを取り替えられます。

posted by jinya at 23:29| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年02月06日

【bash】teeとプロセス置換を使ってパイプを分岐

bashにてteeとプロセス置換を使ってパイプを分岐する方法の備忘録です。

bashのパイプラインはテキスト処理に便利ですね。ビッグデータが普通に取り扱われるようになった昨今ですが、システムに組み込み済みの処理はともかく、アドホックなデータ分析業務の場合はまだまだテキストファイルでデータを受け渡しすることが多いです。そうすると、データが巨大な場合はそれをちょっと確認するだけでも一苦労もふた苦労もあったりして、そんなときにbashのテキスト処理系コマンドが威力を発揮します。

ここで、途中まで同じで、後ろが異なる処理を複数やりたい場合がありました。例えば、

zcat file0.gz | ./script0 | ./script1 > file1
zcat file0.gz | ./script0 | ./script2 > file2
zcat file0.gz | ./script0 | ./script3 > file3

のようなケースです。

ここで、file0.gzが小さくて、script0が一瞬で終わるようなものだったらどうってことないのですが、数ギガとか数十ギガという巨大なファイルを取り扱う場合には、このscript0を三回繰り返すのが勿体ない。かといって、script0を適用した結果を保存しておくにはディスクスペースが勿体ない。

そこで、teeを使ってパイプラインを分岐し、それぞれ結果を出力します。

zcat file0.gz | ./script0 | tee >(./script1 > file1) \
| tee >(./script2 | file2) | ./script3 > file3

こうすると、file0の展開ファイルを作る必要が無く、また、script0を適用する回数も一回で済み、やりたい三つの作業を実行することができます。繰り返しになりますが、file0.gzが小さかったり、script0の処理が軽かったりすればなにもこんな面倒なことをしなくて済むのですが、巨大で重い場合はこれだけでかなりの時間節約になります。

なお、各scriptがメモリを大きく食う場合はメモリ不足に要注意です。そもそもパイプラインは一行単位のテキスト処理であるケースが多いですから、その場合はあまり気にしなくても大丈夫だろうと思います。


ちなみにこれを何に使ったかというと、あるPOSデータを記した巨大なcsvファイルの整形です。このファイルには、商品情報と店舗情報がマスターになっておらず、一つのテーブルにまとめて書いてありましたので、


zcat pos.csv.gz | nkf -Sw | sed -e 's/,/\t/g' -e 's/\"//g' \
| tee >(cut -f 3,4,5,6 | sort -u > item.txt) \
| tee >(cut -f 7,8,9,10 | sort -u > shop.txt) \
| cut -f 1,2,3,7,11,12 | gzip > transaction.txt.gz


こうやって商品マスター、店舗マスター、トランザクションの三つに分割しています。このcsvはたまたま要素内に半角カンマがないことがわかっていたので、切り出しは単純にカンマ区切りでOKでしたが、ダブルクオーテーションの中にカンマや改行が入っていたらもっと厄介なことになっていました。カラム3と7がそれぞれ商品マスタと店舗マスタの固有IDです。pos.csv.gzはめちゃめちゃ巨大なので、展開したデータを置いておきたくないですし、さらに文字コードを変換したデータを置くのも厳しいので、展開と文字コード変換を一度だけ実施した上で三つの作業を同時にやりたかった、というわけです。

posted by jinya at 19:59| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年12月07日

「この世界の片隅に」〜テレビプロモーションによらない、前代未聞の情報拡散事例

最近、マーケティング系の研究会でヒットとクチコミとの関係モデルを研究していまして(参考:電通/吉田財団助成研究から、画期的な成果(「環メディア」の発見と「コクーンブレークモデル」の実証)が生まれた(法政大小川教授のブログ))、日頃からヒット商品とそのクチコミは興味深くウォッチしているのですが、今年は映画が非常に面白いですね。「聲の形」、「シン・ゴジラ」、「君の名は。」、そして「この世界の片隅に」。どれもネットメディアやSNSでかなり話題になっており、興行成績もそれに合わせてこれまでの映画と異なる推移を示しているようです。

その中でも大注目しているのが、「この世界の片隅に」です。

上のリンクで示したモデルは、草の根から発信が始まって、ある時期に中規模ネットメディアに見つかり、それが拡散を広範化させ、それを繰り返すうちにテレビに見つかって大ブレークするというメカニズムを観察しています。最初のステップは共通の趣味の人が訪れるまとめサイト、次は中規模のネットニュース、それがYahoo!JAPANのニュースに繋がり、地上波ワイドショーで取り上げられてブレークするのが共通したヒットの法則でした。しかしこれを裏返すと、大ヒットの裏には必ずテレビの影響があるということ。大ヒットにはテレビは欠かせないメディアであり、テレビの影響なくして大ヒットには繋がらない(もしくは、非常に難しい)というのが、コクーンブレークモデルの結論の一つです。

しかし、映画「この世界の片隅に」は、もしかしたらそのモデルを覆すのかもしれません。なぜなら、これまでテレビでのプロモーションがほとんど行われていないからです。さらには、SNSやネットメディアでこれほどまでに盛り上がっているのにもかかわらず、ワイドショー等が取り上げない(上のコクーンブレークモデルでは、ある程度の盛り上がりがあったら、テレビがそれを見つけて再拡散するというメカニズムが働く)という希有な事例でもあります。

プロモーションが行われない理由、また、テレビがニュースとして取り上げない理由はここでは関知するところではありませんし、議論する気もありません。私が科学として興味があるのは、テレビ露出がこれまでほとんどないという事実に対して、そのような商材がなぜこれほどまでに情報拡散され、消費されているのか、その情報がどのような拡散のメカニズムを経由したのかというところです。特に、映画館ではお年寄りの姿も多いとのことですが、しかし、お年寄りはネットを利用するよりも、テレビから情報を得るのが圧倒的というのがこれまでのモデルでした。もしかしたら、いわゆるM3F3層のネット利用率、ネット使いこなし率は、現在思っているよりもかなり高いのかもしれない、などの興味がどんどん湧いて出てきます。もちろん、実際のデータを見てみないことには本当のところはわかりませんが、想像するだけでも、これまでのプロモーションの通説を覆すいろんな要素が、この映画の拡散プロセスには詰まっているような気がします。


ところで。

本作品、もちろん科学としての興味も大きいのですが、私はこの映画自体も素晴らしいと感じましたし、作品の素晴らしさが突き抜けているからこそ、大規模プロモーション無しでこれほどの拡散が観察されるのだろうと思いました。実は二度ほど観に行きまして。私の祖母がちょうどすずさんと同じくらいの年齢だと思います。幼い父を抱えて空襲の中を逃げたという当時の話を聞いていましたから、あの光景が非常に身近に感じられます。防空壕の中にいて、落ちてくる爆弾の音のリアリティも鳥肌がたつほどの恐怖をかき立てます。そして、クライマックスからエンディングにかけての子持ちの親としての感慨もあります。つまり、そもそも作品として素晴らしいし、また、観終わった後、これを身近な人にもぜひ見てもらいたいと思う気持ちが非常に強く感じられるのが、本作品の特徴なのだろうと思います。

最初はわずか63館で始まったとのことですが、年明けには190もの映画館での上映が決まっているとのこと。また、海外上映への動きも始まっているとのことで、今後も興味深く観察していきたいと思います。あとは、データがあったらぜひ分析してみたいですね。
posted by jinya at 20:27| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする