2017年11月19日

研究会「日本のスイーツ文化と経営」聴講メモ

2017/11/18(土)、甲南大学で開催されました「日本のスイーツ文化と経営」を聴講して参りましたので、そのメモです。

本研究会はスイーツ学会と日本フードサービス学会の共催で、後援が甲南大学、辻調理師専門学校、辻製菓専門学校、協賛に株式会社神戸風月堂(但し風はかぜがまえに百、フォントがないので、以下「風」で同字を記します)、UCCフードサービスシステムズ株式会社。甲南大学は阪急電鉄神戸三宮と芦屋の間くらいにあって、関東の私からはあまりなじみがないのですが、阪神間の高級住宅街とのこと。そして、今回の主テーマである「神戸スイーツ」は、まさにこの甲南大学を中心とした高級なエリアにすむ「お金持ち」の需要に支えられた文化である、というのが全体を通して流れている通奏低音でした。

それぞれの講師の方のお話が非常に興味深く、沢山の思いつきがあっていろいろ質問したかったのですが、なかなか時間も少なく終了してしまいました。いつかまた先生方にお目にかかった機会にお伺いしてみたいと思います。(いや、その前に自分で調べてみるのがいいですね。)

さて、以下は質問したかったことを忘れてしまわないように、自分のメモです。ただ、メモだけ書いていてはなんのメモだか忘れてしまいそうなので、ご講演のアウトラインも記しますが、これは私が消化した限りしか書けないので、もしかしたら先生方の仰ったことや意図を正しくくみ取れていないかもしれません。あしからず。


最初のご講演は甲南大学の西村先生。「地域スイーツ店の成長とその意味」という題で、いかにして神戸に「神戸スイーツ」の文化が花開き、またそれが支えられてきたのか。またこれを題材として、製造業、小売業とは異なる「製造小売業」における産業集積のご研究でした。神戸のスイーツは神戸港の開港による欧州文化の流入に、大阪で成功した人達が移り住んだ阪神間の高級住宅街の需要が掛け合わさって生まれたもの。これに明治時代の関税増から、それまで輸入に頼っていた材料等が内製化されるようになり、神戸スイーツの産業集積が成ったとのことでした。

さて、同じような街が関東にもありまして、神戸と横浜との違いは何かというのが、私の疑問です。質問もさせていただきまして、横浜は米国系の文化の流入に対し、神戸は欧州系だったことが大きな違い。また、神戸スイーツには原材料供給元として「増田製粉」「日仏商事」の影響が非常に大きく、その原材料を中心とした産業集積があったとのこと。なるほど、フランスがキーポイントのようです。そうか、「洋菓子」というのはフランスのお菓子のことで、それは米国でも英国でもイタリアでもないんですね。和洋という字面から、洋は和以外の海外すべてを指すと思っていたのですが、そうではなくて、「洋菓子」や、ほぼそれらを指す最近の「スイーツ」という言葉はすべてフランスを指すのか。だから、欧州、特にフランスからの文化の流入口だった神戸がその舞台となったし、「横浜スイーツ」を聞かないのもそのせいかもしれません。

ところで、風月堂の日崎さんのお話では、実は神戸には洋菓子と同じくらい和菓子の集積もあるとのこと。ただ、洋菓子店は繁華街や商店街に所在しているのに対して、和菓子店は住宅街に点在しているようで、その対比も面白かったのですが、ともかく洋菓子、和菓子とも職人さんが多い。また、辻調理師専門学校の尾藤さんのお話によれば、今、洋菓子の世界的なコンテストでは日本人の活躍がめざましく、常にトップに日本人調理師がいらっしゃるとのこと。この二つを合わせると、つまり和菓子も洋菓子も根っこは同じ、職人さんのマインドは似ていて、ただ材料や作り方が違うだけなのではないか。造形を美しいと思う感覚や、繊細な味覚などが日仏で非常に近いために、和菓子、洋菓子の世界(日菓子、仏菓子の世界というべきか)が非常に近く、その両方が存在している街が神戸なのでしょう。逆に言えば、フランスの職人さんが和菓子を作るのも相性がいいのかもしれません。

ところで、神戸という街がそういう供給側、製造側として特殊なことはわかったのですが、需要側ではどうなのかというのが、帰りの新幹線の中で考えていたことです。阪神間のお金持ちの文化、ということならば、東京にもお金持ちは沢山いらっしゃいますし、東京はあまりにも人が多すぎてスイーツが目立たないだけで、もしかしたら神戸と同じくらいかそれ以上、レベルの高い洋菓子が集まっていても不思議ではない。では、人口分布に対する洋菓子需要の構造はどうなっているのか。家計消費に占める洋菓子消費の割合や額と、そのボリューム。もしかしたら、お客さんの側の構造は東京や横浜と神戸でほとんど変わらず、ただそのボリュームだけが違っていたりはしないか。洋菓子需要に対する洋菓子店の数はどうか。もしくは、洋菓子需要額自体に関東と神戸とで違いがあって、需要側でも神戸スイーツというのは特殊なのか。横浜スイーツや銀座スイーツというのは単に産地ブランド化されていないだけで、需給の市場としては神戸に負けていなかったりしないか。東京の方が移動可能距離内にある人口が大きいので(洋菓子、特に生洋菓子は日持ちしないので、移動距離が効く)、いわゆる舌の肥えた人口も到達圏内には多いんじゃないか。

京都や金沢など、和菓子文化の街と定量的比較にも興味があります。上で考察したように、和菓子と洋菓子を同一視してみたら、菓子経済はもしかしたら相似形かもしれません。京都はお茶、とのことでしたが、神戸でそれにあたるのはコーヒーでしょうか?フランスとコーヒーはあまり結びつかないような気がしますが・・・。金沢は単純にその菓子経済圏を小さくしたようなものなのか、それともまた別の特色があるのか。海外との接点という意味では、長崎なども気になるところです。

尾藤さんのお話では、世代間ギャップの話が印象的でした。ミレニアル世代の社会に対する意識が、欧州を中心とした「世界」の方向性と近い。持続可能性の問題であったり、フェアトレード、オーガニックに対する感じ方だったり。団塊〜団塊ジュニアで形成された日本型超個人主義的な世代と、共同体への帰属意識が高いミレニアル世代とのギャップ。世界(=欧州?)の潮流がローカルな持続可能性のある共同体を指向していることに対して、日本の食文化は対応できていないけれど、ミレニアル世代の持つ意識が今後は引っ張っていってくれるのではないか。

おそらく、日本的、村社会的な社会主義から、欧州的、市民社会的な社会主義への変化なのだろうと思います。ミレニアル世代は生まれたときから既に世界がすぐそばにあって、容易に世界中の知識が入り込んでくる環境がありますので、そういう傾向が強いのかも。クールジャパンといって日本の文化を世界に発信しようとしても、官製クールジャパンはなかなかクールじゃない。本当にクールなものは勝手に出て行っています。中高年は口は出さずに黙ってお金だけ出すのがよいのかもしれません。

風月堂の日崎さんのお話は、神戸に根ざした菓子を文化に昇華させてきた神戸の歴史、それと一緒にあった風月堂さんのお話で、当時の写真等もみせて頂きながら。橘街道プロジェクトではスイーツトレインなども走っているんですね。丁度先週、会津若松に行った際、磐越西線で開催されているフルーツ列車「フルーティアふくしま」を見ました。こちらも大人気で、予約が取れなくて大変らしいです。郡山から会津若松までの約一時間をフルーツとともに過ごす、または、スイーツトレインで奈良から三宮までの時間を過ごすのは非常に贅沢な空間ですね。

上島珈琲の梅下さんからは、上島珈琲店の歴史と店内スイーツのお話を頂きました。ワッフルが一推しだそうですよ、皆さん!喫茶店は東京では個店がなくなりつつあって、チェーン店ばかりになってきていますが、そのチェーン店も需要が多い時間帯はなかなか入れません。上島珈琲店さんもいつも混んでいて非常に入りにくい。一方で、喫茶店は客単価が低くて大変とのこと。これは需給バランスがうまくあっていないんじゃないでしょうか。上島珈琲店さんは他のチェーン店と比較して見た目のスマートさもあるし、1.5倍程度の価格付けになっても十分お客さんが入る気がします。

もう一つ、せっかくスイーツの研究会だったので、スイーツ×珈琲店で思ったこと。昔の喫茶店は、近所のケーキ屋さんからケーキを持ってきていましたよね?商店街の洋菓子店が慣れないイートインをやったり、喫茶店が自前のスイーツを提供したりするよりも、近隣の洋菓子店ともっとコラボレーションしたらいいんじゃないかと、素人考えながら思いました。配達が難しいのかな?ケーキを一切れ運ぶのはかなりたいへんなのかも。

最後はスイーツ学会理事長加護野先生のご講演。非常にエキサイティングな講演で、いろんな企業名がダイレクトに出てきてそれはここには書けません(笑)。非常に印象深かったのは、神戸洋菓子のクオリティを維持できている理由には、神戸の職人達の間にある強い関係性、職人ギルドのような強い連帯があるとのこと。そういえば、これと同じことを湯布院でも聞きました。湯布院でも湯布院の景観や体験の質を維持するために、強い横の連携、よく言えば相互に高め合う工夫、悪く言えば相互監視し、はみ出し者を排除する機能があるとのこと。他の地域ブランドでも同じことを聞きます。確かに、ブランドを維持するためにはそれぞれが好き勝手なクオリティでやっていてはダメで、最低ラインに届かない職人や店舗を排除しつつ、相互に監視をし、また向上し合っていく必要があるのはある意味当たり前のことです。

一方で、そういう組織的な動きは、新しいものや新しい考え方を受け入れにくい。特に、尖った若者にはそのようなある種旧態依然とした関係性は停滞に見えるし、反発したくもなるところ。伝統を守りつつ、時代に合わせて生き残っていくにはどうすべきか。これは、神戸スイーツだけでなく、すべての伝統文化に共通する悩みですね。

ということで、非常に興味深く、刺激的な研究会でした。帰り、摂津本山駅では時間がなくてお土産を買えなかったのですが、新大阪駅で風月堂さんのゴーフルをゲット。自宅用と会社用と。普段は滅多に会社には買って帰らないのですが(これには理由がありまして、また機会があれば)、今回はやはり本場神戸風月堂のゴーフルを買って帰らなくては、社内で研究報告しても半分も伝わらないですから。


posted by jinya at 02:10| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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